出張の人にとっても「青森の食を楽しみにする店」

 小林氏はこう語る。

「お客さまが来店する流れを整えると、店に良い循環が活発になっていきます。良い食材を仕入れたとしても客数がないと食材が回転しないで冷凍庫に入れることになります。客数があると、冷凍ではなく冷蔵の食材を提供することができます。このように全ての店舗の客数が増えることによって、食材の品質が向上すると同時に、メニュー数も広げることができるようになりました」

 前述した通り、仕入れは地雷也だけではなく、同じエリアで展開している飲食業の3店舗と共同仕入れを行っている。また仕入業者も一本化することにより、仕入れコストを従来よりも10~15%軽減することができている。

 今年から、お客さまにオーダーを伺うときに、新規客かリピーターであるかを質問するようにしているが、結果、新規客4、リピーター6という比率となった。新規客が意外と多い。

各店舗ともパーティションによって個室で構成されているが、それを外すことで宴会に対応する

「週末は地元のお客さまが多いのですが、平日は出張のお客さまが多い。青森市内には出張所が多く、平日の宴会は出張所の方が、『県外からのお客さまをおもてなししたい』というご要望もたくさんあります。宴会の人数で一番多いのは20人程度、客単価は飲み物を含めて4000円が多いですが、たまに8000円という宴会もあります」

 出張で青森を訪れる人にとって、「青森でおいしい食べ物を食べる」という動機を満たしてくれるのが、お客さまが来店する仕組みを作って繁盛店となっている店なのである。ちなみに、小林氏は地雷也の売上げ構成をアラカルト6、宴会4の比率がベストと考えている。

 これまでは、小林氏が田中氏とともに取り組んできた店の魅力づくりについて述べた。そして、店の繁盛を支えるマネジメントの仕組みについても語ってくれた。

人間関係を大切にして「離職」の要素を断ち切る

 まず、筆者が東北地区大会の発表で最も感動した「人間関係の構築」について。小林氏はこう語る。

「1号店をオープンして、従業員が1人仙台に帰ってしまい、1カ月間、店が営業できなかった。そこで、お金がないので業者さまに支払いを延長してもらうよう謝罪に回りました。このような経験があって、特に店から従業員がいなくなることがとても怖い。この時に、とにかく従業員を大切にすることを考えました」

 飲食店は「チームワーク」である。それが尊重されるのは、実際には店の中での人間関係がうまくいかないという事実があるからだ。例えば、キッチンとホールとか、店が忙しくなるとみなピリピリしてくる。

 小林氏が現場に入っていた当時、従業員同士にいざこざが発生すると、自分が間に立って関係性を取り直すということができたが、現場を離れるようになって、従業員同士のいざこざが生まれたときに、何をすればいいかを考えた。そして、それは「話し合い」ということに行きついた。

事務所にある小林氏のパソコンでは各店舗に備えられたカメラが店内の状況をリアルに映し出している

 小林氏が店舗を訪問すると、従業員の表情から店の状態が一瞬にして分かるという。さらに、店の人間関係がどのようになっているかが分かるようになった。また、店内にはカメラを設置して、小林氏のパソコンで店の状態を見ることができるようにしている。

 そこで、話し合いの必要な2人を見つけ出すと、事務所に呼び出す。

 ここで注意することは、まず、社長である小林氏自身が感情的にならないこと。小林氏がいざこざの元を作った当人と向かい合って座る。店内のいざこざは40~50代のキッチンのスタッフと、20代のホールスタッフというパターンが多いという。その内容は本当に他愛のないことだ。キッチンが忙しくなっているときに、ホールの人に洗い場を手伝って欲しいところを、それを口に出すことなく、ホールの人に怒り出すとか。その怒った原因を当事者に気付かせて発言させ、怒った相手に謝罪をさせる。これをスピーディーに繰り返して行う。

「これを行っていなかった当時は、感情的に怒る→反発を生む・傷つける→離職が進む→人数が減り、さらに忙しくなる→怒っていた本人も辞める、という良くない循環がありました。これを解決することが経営者の責任なのです」