日本企業が経営する唯一の居酒屋を訪れた!

ウラジオストク駅から数分の高級住宅街に出店した「炭火居酒屋 炎」

 “ヨーロッパ”とうたいながら、前提としてウラジオはアジアである。ロシア国家は欧州に属するが、地政学的にウラル山脈より東側はアジアであり、ウラジオは極東のアジアと位置付けられる。本連載タイトル(『時速8キロのアジア』)に対してうそはついていない。

 ただし、アジアといってもセブン-イレブンもファミマも、イオンモールもない軍港都市。街の様子を知るために、最初に訪れたのが、札幌本社の居酒屋チェーンが経営する「炭火居酒屋 炎」。同店は、ウラジオでは唯一、日本の企業が経営する飲食店であり17年4月に開店した。

 本年9月に開催された東方経済フォーラムに出席した安倍晋三首相も、同店を訪れ、夜の食事を楽しんだ。

本年9月の東方経済ファーラムに出席した安倍晋三首相。スタッフとともに店を訪れた
料理長の日本人以外は全てロシア人スタッフで運営している
屋内46坪(56席)、屋外22坪(30席)、総工費は約1000万ルーブル(約2000万円)

 出張でウラジオに滞在していたチェーン本部[伸和ホールディングス(飲食店40店舗、持ち帰り店55店舗)]の取締役本部長でロシア室室長の中山洋輔氏に話を伺った。

――テラス席が30席前後もありますが、ニーズが高いのですか?

中山 冬はマイナス20℃にもなるため、今のところ冬季は稼働しておりません。でも冬が長い分、集中的に屋外へ出て夏を楽しむ気持ちが強く、テラス席は人気の席になっています。

――ウラジオストクへの出店は、非常に難易度が高かったかと思いますが。

中山 1つは言葉の壁ですね。ロシア語を理解できるスタッフが少なくて、英語で対応しているのですが、一方で、ロシア人で英語を話さない方たちも多くいるので大変です。もう1つは法律の壁。これはロシアに支店のある日本の会社からサポートを受けつつ勉強しています。

――営業状況は、いかがですか?

中山 金曜、土曜は満席で、さらに回転する時間も増えてきました。枝豆、焼き鳥、焼きそばなど“ザ・居酒屋メニュー”が、ロシアのお客さまに受け入れられるのか試行錯誤しながら日々考えています。

ちゃんこ鍋が評判でリピートされている

――枝豆は人気があるのですか?

急な取材に応じていただいた(株)伸和ホールディングス取締役本部長兼ロシア室長 中山洋輔氏

中山 人気商品です。最初にロシア人から、“こんなもの絶対に売れないよ”と指摘されました。でも、居酒屋といったら枝豆は必須アイテムじゃないですか。どうしても置きたいという強い思いがあって、半ば強引に加えました。お客さまに聞くと健康とか美容によいのだと。ちゃんこ鍋も意外。皆で1つの鍋を突っつく文化はありません。やめた方がいいと言われました。しかし、ちゃんこ鍋は、われわれ「炭火居酒屋 炎」の定番中の定番。夏も冬も関係なく売れているメニュー。これは絶対に出したいと扱ってみたら、評判がよくてリピートされています。

――食材はどうされているのですか?

中山 メインの鶏肉は地元の養鶏場と提携して、エサや水、温度管理など、北海道内の養鶏場の方に来ていただいて飼育方法を共有しています。ビールはアサヒビールの輸出ルートがあるので問題ありません。

――ところで、なぜウラジオストクなのですか?

中山 日本の食文化、とりわけ居酒屋文化は、ロシアでは、ほとんど知られていません。それを、私たちが広げていければと出店しました。展開していく上で、国土が広く、人口も多いため非常に夢のある取り組みといえます。

――チェーン展開は、これからですね。

中山 せっかく出店したのですから、1店舗だけでは居酒屋文化を十分に伝え切れません。近郊に出していくか、モスクワのような大都市に拠点となる店舗を出すか、今後の検討課題です

――お忙しい中、ありがとうございました。

 お店のメニューを見ると主力商品のつくね、焼き鳥、鍋は同じだが、日本では扱っていない、タラバガニやロール寿司、エビフライ、ラーメン、うどんなどの日本食を紹介している。つくね、焼き鳥は1本50~60ルーブル、日本円にすると100円から120円、日本と変わらない価格設定であり、地元の感覚としてはアッパーな日本食レストランの位置付けだ。