イラスト/永谷せん

ヒトの心は不思議がいっぱい。それを探るのが心理学。心理学は実践の科学です。実際に使えば理解も早いし応用も利くようになります。ご紹介する心理テクニックは現場で役立つことばかり。ぜひ使って販売力をUPさせましょう。

 あなたにはこんな経験はないでしょうか。

「街で、すれ違いざまに鼻をくすぐった香りで、同じコロンをつけていた元カレのことを思い出した」「スイカのニオイが鼻に入ってきた途端、子供の頃にスイカ割りをした記憶が蘇ってきた」

 こうした、ある特定のニオイがそれにまつわる記憶を呼び覚ます現象を、フランスの文豪マルセル・プルーストの名にちなんで『プルースト効果』と呼びます。

 プルーストの代表作「失われた時を求めて」の中に、主人公がマドレーヌを紅茶に浸し、その香りをかいだことがきっかけで幼年時代を思い出すというエピソードがあるため、それにちなんで名付けられました。

 こんなエピソードもあります。18世紀の詩人シラーは、机の引き出しにいつも腐りかけのリンゴを入れていたそうです。

 なぜ? それは、いい言葉が出なくて悩んだとき、そのリンゴを取り出してニオイを嗅ぐためでした。

 どうやら腐ったリンゴの鼻をつく甘い香りが、シラーにとっては脳を活性化させる特効薬だったようなのです。

 このようにニオイが古い記憶を呼び覚ましたり、脳を活性化させる効果があることは、今やさまざまな実験でも証明されています。

 人間の嗅覚は直立歩行を始めて以来、衰えるばかりで、今や犬の100万分の1程度の能力しかないといわれていますが、それなりにちゃんと機能は果たしているのですね。

 では、男と女で比較をすると、どちらが優れた嗅覚を持っていると思いますか? 

 答えはもちろん女性。その理由の1つは、女性が“選ぶ性”だからだといわれています。どんな異性とも見境なく関係が持てる男性と違い、女性は優秀な子孫をのこすために相手を選ばなければなりません。しかも、考えて選ぶのではなく、本能的に直感で。そのために女性は最も本能的な感覚である嗅覚が男性よりも発達しているというのです。

 ある実験でも、ほとんどの女性が顔を見ずに手のニオイを嗅いだだけで恋人を当てることができたのに、男性は首を傾げる人がほとんどだったといいます。

 女性にとって鼻(嗅覚)はイイ男を選ぶための大切な感覚器官でもあるということ。女性の場合、運命の赤い糸は小指にではなく鼻にくっついているといっても言い過ぎではないのかもしれませんね。

 一方で、私たちはニオイに慣れてしまう生き物でもあります。一説によると、人間はくさいニオイにも3分で慣れてしまうといいます。読者の皆さんの中にも「うわっ、クサイ!」と思っても、しばらくしたら気にならなくなっていたという経験をお持ちの方は多いはず。なぜ、人はニオイに慣れてしまうのでしょう。

 生物の感覚器官は、強い刺激に常にさらされると、だんだんと鈍感になるようにできているからです。例えば、大音量の音ばかり聴いていると、そのうち大きな音に感じられなくなりますよね。それを『マスキング効果』といいます。強いニオイに常に接していると、そのニオイに鈍感になるのです。体臭の強い人、口臭の強い人が自分ではそのことにあまり気づかないのはそのため。

 そういう意味では、店内の香り、そして身につける香りも、あまり濃厚なものはNG。自分はそのニオイに麻痺していても、初めてお出でになる方には不快に受け取られる可能性もあるからです。

 さて、あなたはニオイを上手にコントロールできているでしょうか。

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