1 会社の発意に基づくこと

「会社の発意」は、著作物を作ることについての意思決定が会社の判断により行われていることを意味します。

 そして、この意思決定は、直接または間接に会社の判断にかかっていればよいものとされています。

 例えば、従業員が会社から「商品Aに関する販促用のチラシや記事を作れ」と具体的に命令された場合はもちろんのこと、広報宣伝を担当する従業員が自発的に作ったような場合にも「会社の発意」があったとされることが多いでしょう。

 そのため、多くの場合に「会社の発意」が認められることとなります。

2 会社の業務に従事する者が作成するものであること

「会社の業務に従事する者」といわれると、雇用関係がある従業員をイメージするかもしれませんが、必ずしもそれに限りません。

 最高裁判例によれば、「会社の業務に従事する者」に当たるかどうかについては、「法人等(=会社/編集部注)と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに、法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを、業務態様、指揮監督の有無、対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して、判断すべき」とされています(最二小判平成15年4月11日集民209号469頁〔RGBアドベンチャー事件〕)

 つまり、雇用関係と似た指揮命令・監督関係があり、「会社に著作権を帰属させることを前提にしているような関係」があるかどうかがポイントとなります。

 まず、雇用関係にある従業員や役員は、まさに「会社の業務に従事する者」といえます。

 また、派遣従業員は派遣先の会社とは雇用関係にないものの(派遣従業員と雇用関係にあるのは派遣元です)、派遣先の指揮命令・監督を受けるので、「会社の業務に従事する者」に当たるといってよいでしょう。

 これらに対し、少々注意が必要なケースとして、外部の委託先(フリーランス、下請先など)があります。

 外部の委託先は、基本的には委託元である会社からの独立性が強く、組織的な指揮命令・監督関係があるとはいえないので、「会社の業務に従事する者」とはいえません。

 しかし、具体的事情を考慮した上で指揮命令・監督を受ける実態があるといえるような場合には、外部の委託先が「会社の業務に従事する者」に当たることもあります(東京地判平成10年10月29日〔SMAPインタビュー事件〕など)。このように、外部に委託する場合であっても、職務著作となるかどうかが微妙なケースもありますので、委託する側も受託する側も注意が必要です。

 さらに、外部の委託先については、「会社の業務に従事する者」に当たらない(=外部の委託先が著作者となる)場合であっても、外部の委託先が会社に対して著作物の利用を許諾しているとみられるケースもあります(知財高判平成21年12月24日LLI/DB06420770など)

3 その著作物が職務上作成されるものであること

「職務上作成したもの」といえるかどうかについては、会社から具体的に命令されたものだけではなく、職務として期待されているものも広く含まれ、従業員の地位や給与等も含めて総合的に判断されます(東京地判平成16年11月12日LLI/DB05934436)

 各従業員の職務は必ずしもはっきりしないことが少なくない上、最近では、従業員の働き方も多種多様となり、職務とプライベート、職務と職務の境界も複雑になっているため、今後はさらに職務の内容・範囲の認定が難しくなるかもしれません。

「その従業員の職務とは何か」を認定していくことが重要となります。

4 会社の名義で公表されるものであること

 職務著作となるためには、著作物が「会社の名義で公表されるものであること」が必要です。

 従業員が職務で作成したものであっても、その従業員個人の名義で公表されるものは職務著作とはならず、その従業員個人が著作者となります。

 注意すべきなのは、「会社の名義で“公表される”ものであること」が必要なのであって、「会社の名義で“公表された”ものであること」ではないという点です。

 つまり、結果として未公表のものであっても、仮に公表されるとすれば会社の名義で公表されるものについては、この要件を満たすということになります。

 例えば、従業員が会社の命令を受けてあるデザインを描いたものの、結果的にそのデザインが没になり公表されなかった場合、そのデザインの著作者は会社になります。その従業員が会社を退職した後に、会社に無断でそのデザインを使用すれば、会社の著作権・著作者人格権を侵害することになってしまいます。

5 作成時の契約、就業規則等に別段の定めがないこと

 1から4までの要件を満たす場合(そのままであれば職務著作として会社の著作物になるような場合)であっても、その著作物が作成された時点で契約や就業規則に「職務著作の要件を満たす場合であっても、◯◯のときには従業員個人を著作者とする」ということを定めてあれば、それに従うこととなります。

 これとは反対に、1から4までの要件を満たさない場合には、「会社が著作者となる」ということを契約で定めてあっても、会社が著作者となることはありません。

 この場合にどうしても著作権を会社に帰属させたいのであれば、会社は、「著作者」である従業員から「著作権」を譲り受けることになります。

 このように、「著作者」になるかどうかと、「著作者」に帰属する「著作権」を移転させるかどうかとは別問題なので、注意しましょう。

 以上の5つの要件を満たし、「職務著作」に当たるということになれば、冒頭の事例において、会社が従業員の作成した著作物をコピーして他の店舗などで利用することができますし、ホームページやチラシに転載することもできます。

「職務著作」についてのまとめ

 職務著作についてざっくりとまとめると、次のようになります。

・従業員が職務上作った著作物は職務著作となり、会社が著作者となる
・外部の委託先が作った著作物は職務著作とはならず、委託先が著作者となる

 もっとも、これらははっきりと区別できるものではありませんし、従業員についても、最近の働き方の多様化を踏まえると、その従業員の職務の内容・範囲を認定するが難しいケースが増えるかもしれませんので、注意が必要です。

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 3回にわたってお送りしてきた「小売業が気を付けたい法律を知ろう」は、今回が最終回になります。大きな権利を守る「ブランド保護法」、世に出た作品に関わる「著作権」そして個人の創作と企業とをつなぐ「職務著作」。グレーな部分の多い分野だからこそ、法律を正しく把握しておきたいところです。商業活動の一助となれば幸いです。(編集部)