店頭でのスマホ決済を導入することで、新規客の獲得のみならず、既存客のリピート来店を促進するマーケティング効果も期待できる。日本でもいくつかのスマホ決済サービスが多くの加盟店を獲得しつつある。設備投資や固定費など加盟店になるためのハードルはそれほど高くないが、スマホ決済の導入によって何を実現したいのかを明確にした上で、目的に適したサービスを選択する必要がある。

小売店がスマホ決済を導入するメリット

 小売店の立場からみれば、スマホ決済が急速に普及しようとしている今の状況は好機ではないだろうか。スマホだけで買物ができるという便利さに慣れた利用者は、より多くの金額を使ってくれるようになると期待できる。現に、スマホ決済を先行導入した事例では、買物1回当たりの決済単価が大きく上昇した例もある。また、外国人が慣れ親しんだ決済に対応することで、いわゆるインバウンド需要の取り込みも可能になる。

 ただし、インバウンド需要を取り込みたい場合、どの国の旅行客をメインターゲットにするかによって決済サービスの選択肢は変わってくる。この連載で既に触れたように、中国で利用されているスマホ決済はほぼQRコード型の「支付宝(アリペイ)」と「微信支付(ウィーチャットペイ)」なので、中国人を対象にしたいなら、この2つに対応している決済サービスを選択する必要がある。

 差別化のために、マーケティング機能を充実させる決済サービスも増えている。例えばた、その場で割引きを適用したり、購入額に応じてポイントを付与したりする機能である。決済利用者のスマホにメッセージを送る機能を提供するサービスもある。決済利用者をファン化して購買データを分析できれば、新規顧客獲得に役立つマーケティングツールとしても効果を発揮する。

 海外から上陸したApple PayやAndroid Payに加え、日本企業が提供するスマホ決済サービスも数多く登場している。これからスマホ決済を導入するなら、どのサービスの加盟店になるのがいいだろうか。

 ここでは、既に国内で多くの加盟店を獲得している「楽天ペイ」と「Origami Pay」の概要を比較してみたい。この2つのサービスを比較することで、サービス選択において優先したい項目や条件を具体的にイメージできるだろう。

普及しているほとんどの手段に対応する「楽天ペイ」

 楽天ペイは、NFC(近距離無線通信技術)型とQRコード(二次元バーコード)型の両方に対応しており、対応する決済手段の豊富さでは日本随一の決済サービスといえる。

 もともとは、店頭でクレジットカードを提示してもらい、スマホやタブレットに接続したカードリーダーで読み取る「楽天スマートペイ」として2012年12月に開始されたサービスが進化したもの。16年10月にQRコードに対応したアプリ決済機能が追加されたのに続き、17年3月にはNFC対応のカードリーダーが発売され、Apple PayやAndroid PayなどNFC型サービスの決済も可能になった。

 クレジットカードのみならず、SuicaやPASMO、楽天Edyなど国内で普及している主要な電子マネーにもほとんど対応している。さらに、17年中に、中国でQRコード型決済サービス市場をアリペイと二分しているウィーチャットペイにも対応する予定である。

 アプリ決済には、QRコードをカメラで読み取る一般的な形式に加え、利用者がスマホに金額を入力して決済する「セルフペイ」と呼ばれる形式も用意されている。

 楽天ペイのもう一つの特徴は、入金サイトの短さである。楽天銀行を入金口座にした場合、週末であっても代金が翌日に入金される。将来、スマホ決済の比率が高くなっても入金日までの資金繰りを心配する必要がない。

 一方、数少ないデメリットとしては、月額固定費用は発生しないものの、加盟店は専用のカードリーダーを購入する必要があることが挙げられる(NFC対応の最新型で税込み1万8800円)。