直販戦略もハードルが高い

 ブランド企業がローカルのライセンシー企業を切って独資現地法人による直販展開に移行しても、ライセンシー企業が築いたマーケットを回復するには切られたライセンシー企業が売上げを回復させるのと大差ない時間がかかる。ローカル対応したからこそ獲得できた事業規模を海外のブランド企業が再構築するには、知名度や販路など基盤を受け継いでもアウェイの障害を覚悟しなければならない。世界統一のブランディングと流通統制に固執して直営店に販路を絞り、ラグジュアリー価格を通すならなおさらだ。

 クリスチャン・ディオールがカネボウとのライセンス契約を打ち切った97年当時の日本売上高は500億円に達していたが、直営展開でその市場規模に回復させるのに15年も要した。バーバリー社はインポート商品の直営店展開に切り替え、日本売上高を打ち切り直前の2500万ポンド(42億円)から3年で170億円まで拡大する計画だったが、店舗数こそほぼ計画通り、39店舗に拡大したものの計画売上げに達したとは発表していない。「三陽バーバリー」の市場規模を復活させるにはさらに十年以上を要するのではないか。

 唯一、順調に事業と市場を受け継いだのがラルフローレンで、インパクト21の子会社化には買収費用を要したものの販路も人員も生産背景も受け継ぎ、落ち込みの時期もなく順調に売上げを拡大。売上高は非公開だが現在は440店舗を展開して卸売も継続している。ラルフローレンの場合はインポート一本にも直販一本にも絞ったわけでなく、ライセンス生産や卸売も独資子会社が受け継ぐというローカル対応が市場の継承と拡大に貢献したと見るべきだ。

ブランド買収という逆手

 ライセンシー企業はブランド企業に使い捨てられるばかりとは限らない。ライセンス契約が切れるリスクを確実に回避するには、ブランドの権利かブランド企業を買収してしまえばよい。

 実際にそうしたのが1970年に「ダックス」のライセンス生産を始めて91年に会社ごと買収した三共生興のケースだが、安定は得られても売上高は伸び悩んでいる。レナウンの「アクアスキュータム」のケースはさらに複雑で、90年に買収したもののうまくいかず09年に英ブロードウィックグループに売却した上でライセンス契約は継続。その後、香港のYGMトレーディングを経てレナウンの親会社、山東如意が獲得してレナウンが日本国内の商標権を取得し、ライセンスが継続されている。

 アディダスにライセンス契約を打ち切られて辛酸を舐めたデサントは、84年から所有している「マンシングウエア」に加えて「ルコックスポルティフ」などライセンスブランドの地域商標権(アジア・日本)を次々と買い取り、18年3月決算では自社ブランド44%/商標権所有ライセンスブランド48%/非所有ライセンスブランド8%の売上構成に至っている。        

グローバル統一からローカル対応へ

 ファッションブランドのグローバルなブランディングと流通のビジネスモデルはごく一部のスーパーブランドを除けば今日も確立されたとはいえず、グローバル統一から個別ローカル対応へ逆行するケースも見られる。グローバル直販展開のブランドも国によっては徹底できなかったり、徹底した故に市場規模が萎縮したり、各国販社間のディストリビューションが硬直化して在庫が停滞したりと混迷は否めず、ライセンス契約やエージェント契約に戻すケースも少なくない。

 アパレルはローカルなもので、直販化しても52週の販売予算や在庫コントロールはもちろん、サイジングのローカル対応も避けては通れず、グローバル統一展開には限界がある。市場規模の拡大と流通効率を考えればローカル対応は不可欠で、ローカル企業との合弁やライセンス契約はなくならないだろう。各国のマーケットが変貌していく中で適時、最適な解を求められるのがブランドビジネスの現実ではないか。