タイの人は実店舗で買物をするのが大好き

 登録の際にFacebookでログインする人が74%と多いのも特徴の1つだ。世界一Facebookが普及している国の1つという背景も影響しているが、日本人があまり外にデータを出すことを好まないのに対して、タイ人は便利で手軽にできる方法を抵抗なく選択する。合理的といえば合理的だ。

 実店舗への来店や利用を促進する「Gotcha!mall」の仕組みもタイ人向きかもしれない。松尾氏は言う。

「タイのEC事業に長く携わった経験から、タイにおける実店舗の強さを実感しています。クレジットカードを持っていない消費者も多く、オンラインでの決済の抵抗がある人も少なくない。何より、実店舗で買物をするのが大好きなんですね。その点、「Gotcha!mall」は実店舗への来店や購買につながるプラットフォーム。伸びゆく可能性は大きいと見ています」

ハート型のスタンプでオフラインと融合

タイ限定で導入したスタンプ。クーポンを使用するとスタンプがポンと押されてスマホの画面上に「USED」と表示される楽しい仕掛けだ。

 昼休みなどちょっとした時間を使っては、路上に広がる屋台での買物を楽しむタイ人たち。小さなショップが立ち並ぶナイトマーケットをこよなく愛し、会場をぶらぶらと買物して回る彼ら彼女たちの姿を見ていると松尾氏の指摘にも納得だ。

「リアルでの買物好き」なタイ人の特性を踏まえて、タイ限定のサービスを一部店舗に導入した。ハート型のスタンプだ。店のスタッフにスマホ画面のクーポンを見せると、スマホ画面にこのスタンプを押されて、画面のクーポンに「USED」と表示される仕掛けである。

 ハート型のスタンプが押されると、あたかもクーポンが実体のあるモノのように思えてくる。この「オンラインとオフラインの融合型サービス」がなくてもクーポンの効力には何ら影響がないが、スタンプが押されると何やらわくわくとした気持ちになるのは確かである。

「導入店での反響は上々でした。自分のスマホにスタンプを押すと「USED」と出るのが面白いというコメントをいただいています。買物が楽しくなる仕掛けをもっと作っていく計画です」(松尾氏)。

コンセプトは「Shopping is Entertainment」

 気になるのが、「Gotcha!mall」がお得なクーポンの利用だけにとどまってしまうのではないかという点だ。タイ人は価格志向が強い。見た目のお得感に弱く、ただでもらえるプレゼントやノベルティにも目がない。小売りの現場で「Buy2 Get1」(2個買ったら1個サービス)というサービスが氾濫しているのも、そうしたお得感を打ち出すことで簡単に確かな成果が得られるからだ。

 企業が「Gotcha!mall」に参画するそもそもの目的は、商品やブランドのファンを育て、ロイヤリティを形成すること。クーポンや割引券はその手段でしかない。本来の目的は果たされるのか。松尾氏の答えはこうだ。

「クーポンを発行するだけではなく、商品やブランドの価値や情報を一緒に伝えていきます。例えばブランドについての知識が得られる動画をはさみ、その動画を見ないと先に進めない仕組みを作るなど、いくらでも方法はありますね。『Gotcha!mall』は単なるクーポンサービスではない。コンセプトは「Shopping is Entertainment」。お客さまの買物を楽しく演出するプラットフォームなんです」

来年には現地法人を設立予定、他国への進出もあるか?

 目指すユーザー数は3年後の300万人。参画店舗は2万店が目標だ。まずは今後3カ月で5万人~10万人を獲得するため、SNS大国の利点を生かし、インフルエンサーを活用して告知に努めていく他、ポップアップや看板を使ったインストアマーケティングを強化していく。そして日本同様、参画する小売店やレストランの売上げを1.6倍に押し上げる計画だ。

 来年には「Gotcha!mall」の現地法人設立の予定もある。

「ベトナムへの進出も検討しています。ベトナムにはタイの財閥系の企業が多数進出しているので、事業を展開しやすい。フィリピンも選択肢の1つです」と松尾氏。

 タイをはじめ、ASEANに進出した日系小売業からはまだ「これ」といった成功例は出ていない。どちらかといえば苦戦している企業の方が多いのが実態だ。日本生まれの「Gotcha!mall」は日系企業にとっても力強いサポートになるのか。まずは5万人~10万人のユーザー獲得を目指す次の3カ月間に注目だ。