「本部と店舗のギャップが大きくて、指示が徹底できないのです。何とかそれを教育して店舗のマネジャーのレベルを上げたいのですが……」

 とあるチェーンの人事部長からのお問い合わせがありました。

 お話しを伺うと、「課題解決力が大事だと分かっていても、そうした研修をやっても効果が出ない」とのこと。

 課題解決のようなテーマで事例研修をやると、そのときだけは、何となく分かったつもりになります。ところが、いざ店舗に戻り、実務でやろうとしてもできないというのは、よくある話。研修を企画した側も、受けた側も、これでは役に立たない、となるわけです。

 理由は簡単。経営として課題解決をする環境を準備して、個人が力を発揮できる仕組みを設けていないからなのですが、課題解決力の弱い企業というのは、中堅幹部の部分的な改善とか、一過性の問題への改善とかを現場レベルのよくいわれるボトムアップをやろうとして失敗を繰り返すことが多いのです。

 ですから、1つの課題が解決しても、次から次へと問題が起こり、その場しのぎの出口の見えないカイゼンとなってしまいます。部門を超えた改革や改善が進まず、企業にお金が残らないのです。

これまでは小手先の改善で済んだが……

 こうした企業に共通することは、これまで売上げが堅調であったり、出店で売上げを増やしてきた企業であること。そのため、小手先の部分的な問題だけを改善していれば、表面上、取り繕え、課題解決の機会が少なかったことです。

 しかし、今、日本国内では人口減が起きています。これからは一つ一つの店での改善が不可欠と考えた場合、人時生産性への取り組みがないと、一歩も進めなくなってしまいます。

 前職の総合スーパーは、ドミナントエリアに立地に恵まれたドル箱店舗を多く保有していました。通常のお店の何倍もの利益を稼ぐドル箱店おかげで、これが企業の実力と誰もが信じて疑うことなく店舗数拡大を続けていきました。

 しかし、その時点では、企業の人時生産性という考えを持たずに出店をしていったため、気付けばドル箱店は老朽化で競合に押され、新店の赤字を抱え、これまでの黒字体質から瞬く間に赤字体質に変わっていきました。そのため、再生するまでに、何年もの長い月日を要することになったのです。

人時生産性を指標にし、赤字体質から脱却

 そのきっかけとなったのは、各店が人時生産性の指標をもつこと。その収益力を見ていくことが、再生のカギとなりました。その指標に基づき、全ての赤字グループ企業や赤字店舗を清算。本業の人時生産性一本に絞り、全店で人時生産性を上げる仕組みづくりに取り組みました。このドル箱店舗に依存しない改革を行ったことで、その企業は小売りチェーンでは世界一の水準を維持し続けています。

 企業の目標を売上げだけにしてしまうと、「売上拡大が全てを癒す」という状態に陥ってしまいます。本来すべきは「人時生産性で既存の収益力を上げる」ことで、その方向転換への決断を避け続けてきたことが、赤字体質を招いたといえます。

 こうしたことを踏まえ、弊社クライアント先でも、人口減少が顕著に現れているエリアは、人時生産性の取り組みが活発に行われています。日々、現状の業務の中で、これまで当たり前としていた売場手直しや日に何回も行っていた商品補充の回数を1日1回に制限したり、チラシにかかる作業の見直しとして、価格チェックやPOP取り付け、商品移動にかかる時間の最少化に、既に着手しています。