前回は当社調査に基づき、店頭での商品との出会いが買物の楽しさを構成する一要素であることを明らかにした。そのためにはお客さまのニーズと商品のマッチが重要であり、これが合っていれば価格を下げずとも購入されることも示した。3回目となる今回は、そうはいっても避けられない、前回の調査結果の中でも度々登場した「お得感」について、検討していきたい。

そもそも「お得感」の演出とは何か?

 そもそも「お得感」の演出と聞いて、あなたはどのようなことをイメージするだろうか。真っ先に思い浮かぶのは、タイムセールや特売などの値引きの対応ではないだろうか。もちろん、これも答えの一つだが、値引き一辺倒で「お得感」を演出すると、競合との値下げ合戦により消耗戦になりやすい。では、どのような形で「お得感」の演出を行っていけばよいのだろうか。事例やデータ分析を元に考えていきたい。

価格弾力性によって商品ごとに価格設定

 ローソンは2016年6月、ある価格戦略を打ち出した。その戦略とは、価格重視の傾向が強い飲料や調味料などを「キーバリューアイテム(KVI)」と位置付け、地域別に価格を設定するものだ。この価格戦略は、価格弾力性の高い商品を値下げすることで、売上げ・集客力を増加・向上させることを目的としている。

 価格弾力性とは、ある商品の値下げを行った際、その商品の販売個数がどれだけ増えるかということを表した指標である。価格弾力性が高い商品というのは、お客さまが価格に敏感な商品ということであり、お客さまの中にはその商品のおおよその価格感があると考えてよい。

 ローソンの例では、こうした商品について、地域ごとに周辺のスーパーマーケット(SM)やドラッグストア(Dg.S)と対抗できる価格に設定した。この価格戦略によって、お客さまが「コンビニで買うと高いから」と避けていたものもローソンで買うようになり、定価販売のイメージが強いコンビニが、「お得感」という側面でSMやDg.Sと同等に戦えるようになることを狙った。

 このようにKVIは「お得感」の演出にはつながりそうだが、この価格設定方法は店舗の売上げや利益にどのような効果をもたらすものなのだろうか。極めて単純な設定ではあるが、具体的な例で確認をしてみよう。

全品値引きよりも荒利益額が増えた

 下記に示した例では、それぞれ定価100円、荒利益30円で価格弾力性の異なる商品A、B、Cが存在すると仮定している。ここでは商品Aは価格弾力性が高く、商品Cは低く、商品Bはその中間ということになる。

 

 このようなケースで、全ての商品を10円値下げした場合(全品値下げ)と商品Aのみ10円値下げした場合(価格弾力性の高い商品のみの値下げ)の売上げと荒利益を比較した結果が以下である。

・全ての商品を90円に値下げした場合

売上げ:A(90円×200個)+B(90円×150個)+C(90円×110個)=41,400円

荒利益:A(20円×200個)+B(20円×150個)+C(20円×110個)=9,200円

・商品Aのみ90円に値下げした場合

売上げ:A(90円×200個)+B(100円×100個)+C(100円×100個)=38,000円

荒利益:A(20円×200個)+B(30円×100個)+C(30円×100個)=10,000円

 売上げは全ての商品を値下げした場合の方が大きくなるが、荒利益は商品Aのみを値下げした場合の方が大きくなる。価格弾力性の高い商品のみの値下げは、荒利益を増加させる効果があることが分かる。

 このように、特売やタイムセールでも価格弾力性の高い商品、つまりお客さまが価格に敏感な商品を見極めて値下げを行うことで、店舗は荒利益を確保しつつ、お客さまにとっての「お得感」を演出できるのである。

人により価格弾力性の高さは異なる

 では、価格弾力性だけを見てKVIを決めれば、全てのお客さまにあなたのお店を「お得なお店」と感じてもらえるのだろうか。

 一般的に、価格は需要と供給のバランスで決まる。お客さまからすると、自分がその商品を購入してもよい価格というのは、“その商品がどれだけ欲しいか”と“その商品がどれだけ市場に残っているか”で決まることになる。

 ここで、前回を思い出してもらいたい。分析結果から分かったのは、お客さまのニーズが商品とマッチしていれば、値下げしなくても購入してもらえることだった。お客さまのニーズと商品がマッチしている状態というのは、お客さまが“その商品を欲しい”と思っている状態、つまりその商品に対する需要がある状態である。人によってニーズは異なるため、同じ商品に対する需要も人により異なるといえる。価格弾力性に話を戻すと、これはお客さまによって価格弾力性の高い商品は異なると言い換えられる。

 お客さまによって、どのように価格弾力性が異なるのか、実際のデータを見ながら確認をしていきたい。