アーカイブビジネスという選択

 高級ブランドの焼却処分が『サスティナブルじゃない』と非難されるなら、もう1つの選択がある。それがアーカイブビジネスだ。「アーカイブビジネス」とは商品を長期に保管し、長い時を経てヴィンテージ価値を訴求するもので、ワインやコニャック、ウイスキーなどスピリッツ業界では一般的な事業スタイルだ。

 衣料・服飾でもコレクション型の高級ブランドは年に2回も在庫が回転せず、処分しないと膨大な在庫が積み上がるが、値引きして売ったり処分ルートに流してイメージを損なうことなくアーカイブを積み上げ、長い時を経てタイムカプセルを開けるようにヴィンテージ価値を売るという商法も可能だ。ワインではピノ種で数年~10年、カベルネ種では10〜20年の熟成が求められるが(樹齢やテロワールなどで異なる)、衣料品にヴィンテージ価値が認められるにはもっと時間を要する。

 現在、中古衣料業界でヴィンテージ価値が評価されるのは90年代中心に00年代初期までで、新品販売時からは15〜25年を要している。ただ古いだけで価値が評価されるはずはなく、格付けが高いブランドに限られるのはワインも衣料品も同様だ。70年代以前のヴィンテージは美術館級のコレクションアイテムで、ブランドによっては新品当時以上の値がつく。

※AWとSSのコレクションを発表して受注生産するビジネスモデル。近年はプレフォールやクルーズが加わって2+2のコレクションになったが、在庫回転に変化は見られない。

経営効率というハードルを超えて

 アーカイブビジネスは長く熟成させるほど価値が高まるというアイロニーの成立が必要で、それには時間に風化しない確かなプロダクトが限定生産され厳密に在庫が管理されるという条件が付く。「バーバリー」のようなコレクション型の高級ブランドなら4000億円という事業スケールでも商品によっては成り立つが、2つの超えるべきハードルがある。1つは厳密な在庫管理、1つは経営効率概念の切り替えだ。

 商品から分離できないタグにヴィンテージ(19AWなど)と品番、製造番号を付記し、売れ残り在庫も厳密に管理しなければならない。何十年も在庫を寝かせるスピリッツ業界のような悠久な事業感覚も不可欠で、短期の業績を急いては成り立たない。LVMHやシャネルなど欧州のラグジュアリービジネスはスピリッツ事業やワイナリー投資にも積極的だから、アーカイブビジネスにも理解が深いと推察されるが、株主へのリターンに神経質な米国式の経営に流れるバーバリー社には無理かもしれない。

 現実的な選択としてはコムデギャルソンの「CDG」のようなアーカイブから発想したリメイク品を企画・販売するブランド事業が考えられるが、売れ残り在庫問題の解決にはならない。ホントの“本物”は年月に風化しないはずで、この機会に高級ブランドビジネスの在り方を問い直してもよいのではないか。