ムスリムもベジタリアンも食べられる日本料理

ベジタリアン対応のメニュー


 さて、同店ではムスリムやベジタリアン、ヴィーガン対応の商品開発をする上で料理人からの理解はどのように得られたのだろうか。長島氏はこう語る。

「当店の場合、社風として板前との風通しがよく、話し合える環境になっているので、私の思いをすんなりと理解してもらいました。ムスリムからヴィーガン対応になって、使用食材や調味料はガラリと変わりました。職人故に味へのこだわりから難航したところもありましたが、本当においしいものを作ってもらって感謝しています」

「当店の料理は食に禁忌を持つ人に対応するものであってもおいしい日本料理という形を崩さずに商品開発をしています。コース料理の中にはハラールではない料理も含まれることがありますが、事前に食の禁忌の内容を伝えていただくと、それに沿ったコースを組み立てます。そして、単品は全てハラールとなっています。ムスリム、ヴィーガン対応を行ったといってもこれまでのお客さまを切り捨てるというスタンスでは全くなく、ムスリムもベジタリアンも食べられる日本料理であるということです」

 調理部門の担当者に昨年末にハラール対応を行うことを宣言して、今年の年初から商品開発を行い、試食会を3月11日に開催。同店が観光地であることから、友人・知人の伝手で主に日本在住歴の浅い外国人のムスリムと日本人に呼び掛けて参加してもらった。アンケートには、両者ともに「彩り豊かでおいしかった」という回答が得られた。

ムスリムの礼拝に備えて西陣織の礼拝マットや今治タオルを備えた

インバウンド対応によって食の多様性を知る

5月16日に開催されたムスリム対応の勉強会

 前述の通り、長島氏は川越一番街商業協同組合の副理事長である。この立場から、地元の商店街や鉄道会社等に働きかけて去る5月29日にムスリム対応の勉強会を行ったところ約40人が集まった。これがきっかけとなり8月29日に川越市主催で、ムスリムだけではなく「食の禁忌」というテーマでセミナーが開催された。

 現在、同店ではインバウンドに安心して利用してもらえる日本料理店としてホームページの改定を進めている。

 また、フードダイバーシティ社に同店を紹介する動画を作成してもらい、世界に発信。これも同店のことだけではなく川越の町の魅力をベースとした内容になっている。

 長島氏は食の禁忌に対応することは外国人だけではなく、多くの日本人に来店してもらうためにも重要なことであると認識している。病気を経験した人は健康な食事を求めて、子供のアレルギーを気遣う母親は食事の内容に注意しているからだ。

 本連載によって、インバウンドの取材を継続する過程で、筆者はインバウンドに対応することは食の多様性への見識を高めると確信を深めている。当然、逆の理屈も成り立つ。

 そして、これらの環境の充実が、お客さまの来店目的を獲得するものと確信している。

川越の町で年に1度開催されている「江戸の日」。江戸の言葉やしぐさの勉強をして、「江戸を再現しよう」という試み。開催日は特定されていないが、今年は3月31日に開催された