2017年度に創業50周年を迎えたフジ。18年度から20年度を百年企業となる礎を築く第一歩と位置付けた中期経営計画もスタートした。この5月、代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)兼営業担当に就任し、尾﨑英雄代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)とともに同社の新たな歩みをけん引する山口普社長に、これからの店舗づくりと企業としての使命について聞いた。

 
山口 普(やまぐち ひろし)

 1959年3月生まれ。81年4月フジ入社。2009年3月執行役員改善推進部長。10年3月執行役員総合企画部長。11年5月取締役執行役員人事部長兼総務部長。13年3月取締役上席執行役員管理本部長兼人事総務部長。14年3月常務取締役 常務執行役員管理本部長兼財務部長。17年3月代表取締役専務 専務執行役員開発・管理担当兼財務部長。18年3月代表取締役専務 専務執行役員営業担当。同年5月代表取締役社長兼COO兼営業担当(現任)。

――17年度に50周年を迎え、次の50年に向け新たな歩みを進めている。このタイミングで社長に就任された感想は。

山口:50周年を迎え、企業ロゴ、スローガン、そして大事にしてきた精神は受け継ぎながら行動指針も改めた。スローガンは「この街に、あってよかった。」。行動指針も従来は固いイメージだったが「まじめに、たのしく、あたらしく。」に変えた。

 企業ロゴも含めて若くなった、柔らかくなったとお客さまからも言っていただけている。今まで培ってきたものを大事にしながら、50年というと少し大げさかもしれないが、次の10年に向けてしっかりと企業の方向付けをして、内部充実、拡大発展を図る必要があると感じている。

価格という価値にもう一度向き合う

――流通業界を取り巻く環境、消費環境の変化をどう捉えているか。

山口:大きなトレンドで言うと、まず、われわれの業界そのものが高度経済成長期という大きな波に乗って大きくなった。それまで商業を支えてきた旧来の業態から、お客さまの支持をこちらにシフトさせてきた。そのお客さまの支持が次に行こうとしていると感じている。それがドラッグストア(Dg.S)やコンビニ、そして特にEコマースだ。アメリカでは、アマゾンの進出によって従来の商業者が廃業するという極端な例もある。そうしたトレンドの中、端的に言うと、業種業態の移り変わりの中にあるのだと思う。

 また少子高齢化や人口減の影響で、マーケットがシュリンクするといわれても、今まで店頭で実感することはなかったが、近年、そうした現実を実感している。特に地方から影響が出てくると思う。拡大成長期を経て、安定成熟期に入り、お互いが共存できた時代から、少数の生き残るものに選別される時代になってきたと感じている。

――確かに、Dg.Sの食強化など、業態を超えた競合も激化している。

山口:食品はわれわれの主力の事業分野でもあるが、Dg.Sにはショートタイムで買物できるという便利さ、荒利ミックスによる価格の強さがある。ただ、Dg.Sで販売する食品で365日の食卓が賄えるかと言うと、そんなことはない。

 われわれは、365日の家庭の食を中心に食ビジネスをしている。改めてフルラインの強さ、品揃えの幅の強さというところで力を入れていかなければいけないと感じている。また、Dg.Sは店頭を少人数で支えているが、われわれは100人以上で支えている。100人の手数があるということは、一見ハンディキャップのように見えるが、100人の力が合わさったパワーは大きい。そのパワーを生かして、店頭の強さづくりにチャレンジしていきたい。

――具体的にどのような面で今後強みをつくり、変えていこうと考えているか。

山口:1つは価格問題。これは避けて通れない。価格価値というのはお客さまにとって、一番分かりやすい価値だ。価格と本当に向き合っていたかと言われると、少し反省する部分もある。今年の5月に300品目値下げをして、6月に200品追加した。もう1回価格コンシャスをしっかり見つめ直して挑戦していこうと考えている。

「毎日が安い!お値打ち価格」と銘打ったPOPや恒例の火曜市などで、価格コンシャスにもう一度向き合う一方で、店舗が工夫する売場づくりも進んできている。

 

――値下げの効果は。

山口:カテゴリーごとにばらつきはあるが、1品当たりの単価が下がっても、値下げしたカテゴリーでは全体の売上げが以前の数字を上回っている。非常に手応えを感じている。

――消費者の価格への意識をどう見るか。

自分たちの目標を自分たちの手で達成できる組織にしていかなければいけないと山口社長。

山口:日常使いのもの、普段の生活に関わるものについては価格に対する要求、要望というのは今も強いし、これからも弱まることはないと思う。

 また、年配の方は比較的裕福で良い物をちょっとだけ食べたいなどとよく言われる。そうした方もいらっしゃるが、それだけをマーケットと見ると見誤るのではないかと思う。一般的に言われる消費トレンドに対して、本当にそうなのか、自分たちの周りでは実際どうか、その確認を怠らないようにする。それが地域に根差すということの第一歩ではないかと考えている。

MDの表現力をもっと高める

――価格以外に打ち出していく部分は。

山口:もう1つは価値訴求。食品で言えばいわゆるミールソリューション、おいしさを含めた価値や機能をお客さまにお伝えする。

 ミールソリューションとは、おいしく食べたい、健康に食べたい、簡単に食べたい、便利に食べたい、そういったさまざまなお客さまのニーズに対応し、不便を解決するアプローチだ。現場の中でどう表現して、お客さまに伝えるかという技術の問題だと思う。

 もちろん、それを裏打ちするだけのマーチャンダイジング(MD)が必要だ。MDという言葉を分解して考えると、MD=調達力と構成力と表現力だろう。調達力と構成力は基本的には商品部の仕事。表現力は店舗を主にした話だと思う。今、その表現力を上げる努力をしている。

 以前から52週MDに取り組み、その週の主力商品、シーズンの取り組み商品について、しっかりと売場をつくって、数字目標も持って取り組んでいこうとしている。ただし、商品指示書1枚ではなかなか伝わらない。そこで、社内のイントラネットを活用している。

「私の売場づくり」というサイトがあり、商品部が主力商品などについて商品計画を店舗に対して発信する。

 発信を受けた店舗はそれに基づいて売場をつくり、その上に自分たちの工夫を載せる。その売場を写真に撮り、短いコメントを付けてアップする。商品部長がそれを見て、コメントしたり「星いくつ!」と点数なども付けてみたりする。従来のサイトはあったが、今年から注力し直した。

 売場づくりの技術力が上がるだけでなく、商品部の思いが店舗に伝わり、店舗と商品部長とのダイレクトなコミュニケーションが生まれる。またいい売場やいい技術などの基準ができて、その基準のバーが上がっていく。

 売場そのもののレベルが上がってきていると肌感覚で感じているし、それが販売点数の増加や関連商品が売れるといった結果につながっている。

 究極は前向きに商売に向かえる組織づくりだ。店舗がしっかり考えて、工夫して、自分たちが主体的に動ける組織、それをバックアップできる本部、そんな組織を作ろうという思いがある。それに向けた一つの事柄だ。

――中期経営計画でも、成長のための企業文化・人材・利益体質作りと銘打つ。

山口:中計では今後の方向性を改めて明確にした。それを支えるのが組織と人材だ。外部環境がアゲインストな中で、自分たちの力で自分たちの道を切り開いていく行動力のある組織でないと残れない。組織風土改革に向けて、さまざまな取り組みを進めていかなければいけない。従来の良いものを大切にしながら、より自律的に行動ができる、自分たちの目標を自分たちの手で達成できるそういう組織にしていかなければいけない。政策立案力と政策実現力という言葉があるとすれば、政策実現力が問われていると思う。

事業の成長性を見極め、ニーズに対応する

――衣料や住関連事業については、GMS(総合スーパー)にとって課題とされているが。

山口:例えば、衣料については、われわれは従来、幅広い品揃えでお客さまに支持を集めている企業だった。そこへ新しい着やすさや機能を価値として打ち出すファストファッションや専門店の企業が出てきて、そこにお客さまの支持が集まり、さらにその上にEコマースが入ってきた。

 われわれの売場はそれに呼応しようとしたが、なかなか押し返していけないというのが今だ。誤解を恐れずに言えば…「GMSはその時代的役割を終えた」とよく言われるが、ある意味ではそうかもしれないと思う。例えば、ポケベルをつくっていた会社があるとする。PHSが出て、携帯が出てくると、ポケベルにすがっていたら退場を命じられる。

 衣料もそうした側面があり、それくらい割り切りが必要だと思う。ただし、今売場があり、資産がある。

 そこでどうするか。例えば、衣料では、機能の価値とファッション性の価値で、商品が選ばれると思うが、ファッション性の価値で選ぶような商品群ではなく、機能価値で選ぶような商品群のボリュームを上げていく。その機能をお客さまに訴えることにエネルギーを注いでいきたいと考えている。

――一方で、衣料や住関連へのニーズの高い店舗もあると思うが。

山口:確かにわれわれの店舗では地域一番店もあり、お客さまのニーズがあれば、もちろんそれにお応えしなくてはいけないしお応えしていく。しかし、一定の時間軸で見ると、マーケットそのものがシュリンクをしており、拡大は難しい。ダウントレンドの中で、お客さまのニーズに応えながら、最終的に一定の着地点を見つけていきたい。

――そうした意味で、地域性も出る食品は主力となってくる。

山口:プレーヤーが多く競争は厳しいが、マーケットにはそのプレーヤーが戦うだけのボリュームがある。

――今後の出店はスーパーマーケット(SM)中心になるのか。

山口:SMないしはNSC(ネイバーフッドショッピングセンター)を中心に、松山・広島両都市圏を重点エリアと位置付け、出店をしていく。

――ノンストアリテイル事業については。地域貢献的な意味もあると思うが。

山口:地域貢献という面では、移動販売なども行っているが、これはビジネス視点でも手応えがある。ご年配の方で店舗に来ることができない方もいらっしゃって、ニーズは確かにある。

 また、ありがたいことに、企業名が出たときに安心感を持ってもらえる。薄く小さなマーケットで、他社の後塵(こうじん)を拝していてはなかなかマーケットで立ちゆかない。それを先に面で押さえていく。

――地域におけるフジの役割、使命は。

山口:われわれのお届けする商品、サービスでお客さまの日々の生活が良くなり、少しでも幸せを感じていただく、そうしたことのお手伝いができればいいなと思う。

 時代が変わり、競争環境も変わり、Eコマースも含めていろいろなものが変わってきているが、お客さまに一番近い生活産業であるということはずっと変わらないだろう。

 生活産業としての役割をしっかりと発揮することというのがわれわれのこれから先も求められる使命だ。

 

 

※本記事は『販売革新』2018年9月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。