先日のマスコミ報道よれば、JR駅構内の「キヨスク」へ雑誌の卸売りを一手に担っていた公益財団法人「鉄道弘済会」が10月にも撤退するそうだ。何でも雑誌販売がピーク時の10分の1となり採算が悪化したことが主たる理由。ひとまず出版取次大手のトーハンが「鉄道弘済会」の卸売り事業を引き継ぐことになり、JR駅構内の売店から雑誌が消えてしまう危機は回避したものの、依然雑誌を巡る消費環境の厳しさは変わらない。

特集内容はズバリ「刀剣」

 そんな暗いニュースを耳にする一方で、タイトルの通りの出来事である。マガジンハウス社の男性向けライフスタイル誌の『ブルータス9/15号』(9月1日発売)が品薄状態なのだ。その要因は特集内容でズバリ「刀剣」。すると全国の刀剣乱舞好きからのオファーが殺到、アマゾンでも在庫切れの次回入荷は未定扱いなのだ。そもそもこの刀剣乱舞とはDMM.comが発売しているオンラインゲーム。日本刀を擬人化した内容で、ゲーム以外に2.5次元世界にまで広がる世界観を持っている。そういった意味では、日本の伝統工芸と歴史、昨今の若者を中心とした熱狂振りと、マガジンハウスが取り上げるには、格好の好材料だったといえる。そして、何といっても発売前の段階からTwitterで話題になって情報が拡散したあたりが現在の消費動向を象徴したような話だ。

 ここで改めて話題にしたいのが、先週から引き続き「オタ活」。もはや、これは「オタ活力」「オタ活パワー」といっても過言ではない近頃の若者たちの消費行動の特徴。衣料品ディスカウンターチェーンのしまむらでもアイドルキャラクターの「ラブライブサンシャイン」や「アイドルマスター」では3日間で消化率6~7割以上と驚異的な数字だと聞く。グループ業態のアベイルでも「艦隊これくしょん」、通称「艦これ」とのコラボレーションも活況だったように、グループとして新しいサブカルチャーとの協業に取り組んでいる。

 これは商品が売れない時代といわれる中で、なかなか興味深い話。そもそも商品の価値観とは、長い人生を積み重ねながら培われるものだと筆者は考える。若者自体、人生経験の少なさから本質的な価値観を見通す力については未発達かもしれない。しかし、その一方で前例にとらわれない新しい発想や、その時代にマッチした価値観を見出せる力を持っている。それは若者の特権や特徴とも言い換えられるのではなかろうか。特に小売り全般に携わる者なら、こうした消費の変化に敏感に反応、対応する必要があると思う。

紙媒体「生き残りの道」の一つ?

 地方の催事イベントの定番として、「刀剣展」は人気イベントだと聞く。今までは男性の嗜好工芸品の代表だった「刀」は、刀剣女子とまで呼ばれる若者たちで一杯になる日は近い!? いや既にそうなっているかも。そもそもブルータス自体、どちらかというと硬派なイメージの男性誌なのだが、今回予約、取り寄せ、商品を探しているのは女性が多くを占めていると予想する。それはネット情報では味わえない出版社の考察力と編集力への期待も含まれているのではないか。メディアの在り方、紙媒体が生き残っていく道の一つの方向性かもしれない。