日経の「Deep Insight」というコラムは示唆に富んだ記事が興味深いが、8月10日のコラムではデルとアップルの四半世紀を比較して、どっちがパソコンメーカーを脱して化け上がったかを論じていた。ご存知のようにアップルは前世紀のパソコンメーカーからiPod、デジタルコンテンツ・サービス、iPhoneと事業分野を広げ、時価総額1兆ドルを超えた世界最初の上場企業となった。

『伸びる企業は化ける企業』と提じて日本企業に喝を入れる論展と受け止めたが、それはハイテク分野に限らず、伝統的な小売業やアパレルビジネスにも共通する真理のようだ。

VFコーポは2度も化けた

 アップルはパソコンメーカーからiPod&iTunes、iPhone&AppStoreと2度化けたが、アパレル業界にも2度化けた強者が存在する。米国最大のアパレルメーカー VFコーポレーションがそうで、今も社名に残るVF(Vanity Fair)というランジェリーメーカーから1990年代にジーンズ主力に転換し、今世紀に入ってはアウトドア&アクションスポーツを拡大してランジェリー事業を売却。2017年には「ディッキーズ」を買収してワークカジュアルの拡大を急いでおり、今8月には成長力の陰ったジーンズ部門の分社を発表している。売却でなく分社なのは、ほぼ10年ぶりという世界的なジーンズ復調が考慮されたと推察される。

 化け(ドメイン転換)戦略の要は事業の買収と売却で、ジーンズ進出初期には「ラングラー」や「リー」、セレブデニムブームの07年には「セブン・フォー・オール・マンカインド」を買収。00年のアウトドア&アクションスポーツ進出にあたっては「ザ・ノースフェイス」、04年には「ヴァンズ」「ナパピリ」、11年には「ティンバーランド」を買収している。その一方で07年には祖業のインティメイト事業、16年にはプレミアムジーンズなどのコンテンポラリー事業、18年3月には03年に買収した「ノーティカ」を売却してスポーツウエア事業を清算している。

 祖業に固執していては成長機会を損なったはずで、次の時代を見据えて有望ブランド事業を買収し成長力を失ったブランド事業を売却し、事業ポートフォリオをドラスティックに入れ替えてきたからこそ成長力を維持して米国最大のアパレルメーカーの座を保てたと評価される。それに比べればわが国の大手アパレルは事業ポートフォリオの入れ替えに消極的で、後手や守りに留まって成長力を失うケースが多いのは残念だ。