「勝久流」なら持ち直したか

 では、創業者の勝久氏なら立て直せたかというと、それも怪しい。『家具・インテリアのショールーム』をうたいながらECには消極的で、久美子氏が09年に立ち上げた稚拙なオンラインストアを14年に閉めたのは勝久氏だ。その後、16年に久美子氏がリニューアル再開して家具やカーテンまで2400品目に拡げたが、17年12月期で2億3400万円(EC比率0.57%)に留まる。

 そのオンラインストアをのぞいてみても、“ショールーム”とうたいながらも店舗在庫の検索どころかEC在庫の表示もなく、今どきのウェブルーミング仕掛けオンラインストアとは比べるべくもないから、久美子氏とてECに通じていたとは言えないが、時代に取り残された責任は勝久氏にあると見るべきだ。匠大塚にしても、あれほどこだわった会員制販売を採っていないし、いまだオンラインストアは存在しない。勝久氏に確固たる信念や展望があったとも思えないのだ。

 イケアさえECに乗り遅れて苦闘する今日、オンラインストアとSNSを連動して店舗へ送客するウェブルーミング、店舗在庫の枠を超えて品揃えを広げEC在庫を引き当てるショールーミング、DC物流とテザリングや店出荷を駆使して顧客利便と在庫効率を追求する未来型ショールーミングストアを勝久氏が仕掛けられたとは到底思えないし、恐らくは構想さえしていなかったに違いない。“ショールーム”をうたいながらショールームストア時代に乗り遅れた、いや乗る気もなかったというのが勝久氏の経営感覚だったのではないか。

 ショールーミングストアの対極の可能性たる家具・インテリアの倉庫型オフプライスストアにしても、ニトリやイケアを超えるハイクラスSPA(※2にしても、勝久氏が構想していたとは思えない。

 海外ブランドで差別化する従来の大塚家具のままであっても、ブランドの独占と高差益を確保するにはアパレルブランドのようなローカルフィット別注やロット調達が不可欠で、物流コストや倉庫コストを削減するにはイケアのようなフラットパック設計による三国間ノックダウンやライセンス生産にも、とうに踏み切っておくべきだった。それに取り組んだ形跡は知る限り見られないから、勝久氏は高級路線を続ける展望も欠いていたのではないか。親子のどちらが経営しても、結局は行き詰まったと見るべきだろう。

(※2)家具インテリアの「アップル」や「バーバリー」があってもよいでしょう。

火中の栗は誰も拾わない

 ここまで時代に取り残された大塚家具を立て直せるのはオムニチャネルなショールーミングストアの自前ロジスティクス体制を確立したヨドバシカメラしかないという世評は正しいが、ヨドバシにとって大塚家具を抱え込むメリットがあるかとなると話は別だ。

 

 大塚家具の店舗は自前ではなく賃貸で、17年12月期で94億円も賃貸料を支払って売上対比不動産費率は23.1%にも肥大している。仕入れ型の大型小売業の不動産費率は一桁に収まらないと利益が残らないし、SPA型でも20%を超えれば苦しい。大塚家具の荒利益率や在庫回転はロードサイド紳士服チェーンに近いが、彼らはSPAだし、定期借地と自己建築店舗を組み合わせた出店で不動産費負担はテナント店より多少なりとも軽い。近々にEC受注比率を20%、30%と伸ばせる状況なら急激な改善も望めるが、稚拙なEC体制で1%に満たない現状では手の打ちようもない。

 会員制の手厚い接客で高客単価を稼いできた販売体制にしても、会員制を崩して客単価が落ち込み売上対比人件費率が20%を超えた今となっては費用の掛かる人員整理が避けられない。在庫も検索できないオンラインストアの現状ではタブレット接客による売上げの拡大や客単価の向上も望めない。

 膨大なシステム投資やリストラ費用を負担すれば再建は不可能ではないが、それでは新規に事業を立ち上げる方が安上がりになってしまう。ヨドバシにとっては買収を検討する企業リストの末尾にも入らないはずで、再建を担う可能性は皆無と思われる。せめて店舗が自社物件だったら、小売業はともかく投資ファンドや不動産業が触手を伸ばすだろうが、それも難しいのが現実だ。親子げんかの果ては救いのない破綻なのかもしれない。