月刊『商業界』2018年8月号の巻頭特集「存続する百年企業の底力」。百年以上の歴史をもつ老舗小売店を取材し、そのバックグラウンドと長く愛される秘訣を探るという特集です。

 100年の間にどんな出来事を乗り越えてきたのか。いつの世にも通じる変わらない価値とは。本誌に掲載された7店舗のうち4店舗をチョイスして「オンライン」に再掲します。

創業1804年(文化元年)
二葉堂(長野・須坂市)
八代目 清水基弘 さん

代表取締役社長 清水基弘さん。1955年2月、長野県生まれ。立教大学法学部卒業後、二葉堂に入社。店舗開発や営業を担当。2005年、50歳の時に八代目社長に就任。

地元客の支持を基盤に観光客、ビジネス客に販路拡大

今でも人気のある「文治のかすていら」。四代目文治は1918年に「文治のかすていら」専用工場をつくり、製法の近代化にも励んだ。33年には、第九回全国菓子飴大博覧会で「棹カステーラ」が名誉金賞牌に。35年には、飛行機から「かすていら」の宣伝ビラをまいたという。

 二葉堂は、初代長次郎が長野から江戸・亀戸で菓子づくりの修業をしていたとき、須坂藩主堀内蔵頭直皓公の目に留まり、1804(文化元)年に藩邸御用達を仰せつかるとともに、「二葉堂」の元になる「二葉屋」という屋号を拝領したことから始まる。

 現在も二葉堂のかすていらの底の部分にザラメがはっきりと残っているのは、四代目文治からかすていらの製法が受け継がれてきた伝統の証しである。

 五代目一雄氏は第2次世界大戦で動され1946年に復員、48年に二葉堂を再開した。52年株式会社を設立、初代社長に一雄氏が就任。68年二葉屋製菓株式会社を設立、70年に弟の保男氏が社長になり製造と販売を分社化した。

社長就任の初仕事はスクラップ&ビルド

カフェ併設の長野総本店。神戸・北野の異人館をほうふつとさせる外観。

 2005年、50歳で八代目社長を就任した清水基弘社長。当時の課題はスクラップ&ビルドが必要に迫られていたことだった。

「強いところ、いいところを伸ばしながら、駄目な部分は切っていく。きちんとした選択肢を持って会社を運営しなくてはいけない状況でした。代替わり、世代替わりをしながらきちんと判断しなければいけないことが大きな課題でした」と、当時を振り返る。

「当時の地方の菓子店は、マーケットの中で空白の地点に出店すれば、そこそこの売上げが取れました。つまり、店舗数を増やせば、売上げが付いてくる状況でした」と清水さん。

 しかし、そのころを境にして、店舗の規模や品揃えなどを整えないと、集客や売上げ、利益につながらないようになってきた。

 今まであった店を閉じることは思い入れがあるのでつらいもの。「本当にこれでいいのか」という思いや不安が常にあったそうだ。

長野総本店の手づくりケーキ工房で作った「世界で一つだけのオリジナルケーキ」と笑顔の記念写真。子供たちの顔が輝いている。

 店舗を集約して、比較的大きな店舗で、カフェを併設するなど、他の機能を付加した店をつくっていった。千曲店は子供が本を読めるコーナーをつくり、長野総本店の手づくりケーキ工房は、子供たちが「世界で一つだけのオリジナルケーキ」を作ることができる。

 おじいちゃんやおばあちゃんの誕生日や、母の日、父の日など、大切な記念日のお祝いの演出に一役買っている。

 現在、10店舗のうち、5店舗がカフェ併設店である。

 二葉堂では、戦前から洋菓子を作っていたが、デコレーションケーキを初めて作ったのが1949年ごろ。当時は普段ケーキを買いに来ない人でも、クリスマスだけは並んでケーキを買ったので大混乱した。2017年のクリスマスはホールケーキを1万1000台、クリスマス小物ケーキを約1万2000個販売した。

 小学新1年生女子の「将来就きたい職業」(クラレがアンケート実施)は、1位が「ケーキ屋・パン屋」である。しかも20年間不動の1位である。それが、中学生、高校生になるとトップ10に入ってこない。「この業種、業態が夢のものでないと、街場のお菓子屋がなくなる」と清水さんは憂慮している。

 少子高齢化が特に地方は顕著である。今までのお客さまが亡くなったり、お菓子を食べられなくなったり、食べたくても、運転免許返納で買いに来られなくなってきている。

「今までと同じことをしているだけでは、売上げは下がって当たり前」と清水社長。

 地元客の支持があっての売上げなので、集客に当たり、新聞折り込みを活用していたが、最近は新聞を取る人が激減しており、他に秘策はないか探っている。

レイアウトを変え、アイテムを絞り、売上げアップ

長野総本店の店内。菓子、ケーキ売場の奥にカフェコーナーがある。
主力商品の「りんごパイふじ」は、長野県特産のふじりんごを蜜煮し、パイで仕上げたもの。

 

「お客さまがたくさんいる所に出向く」という考えから、観光客、ビジネス客に販路を拡大するために2015年に長野駅ビルMIDORIの2階にある信州おみやげ参道ORAHOに出店した。当初、総花的な品揃えにしたが、思った以上に売上げは上がらなかった。

 そこで、「誰に売るか」ターゲットを明確にし、16年夏にレイアウトを変え、品揃えを絞ることにした。長野と言えばリンゴを思い浮かべる人が多いので「りんご小径」「りんごパイふじ」。善光寺参りの人に訴えるものとして、「栗まんじゅう おびんずるさん」、「善光寺鐘楼最中」の4アイテムに絞った。「長野を発信しよう」のショップコンセプトである。その結果、改装前に比べて売上げが平均で130%、調子の良いときには150%になった。

「店に立って周りの店舗を見回すことで、勉強になりました。購入してもらうためには、『陳列』『品揃え』『販売力』が大事」と清水社長は話す。販売員の表情や言葉力、声掛けのタイミングも重要だ。

須坂の本部工場で成型したアップルパイを、店のオーブンで焼き上げ、お客さまに焼きたてを提供している。赤と白のコントラストが目を引く。

 長野駅近郊に、「牛に引かれて善光寺参り」の句で有名な善光寺がある。観光客を狙って、仁王門から本堂に向かう参道の仲見世通りにアップルパイ専門店を17年4月にオープンした。

 現在、長野のリンゴを使った商品を開発中で、「りんご小径」「りんごパイふじ」と併せて、りんご菓子トリオで売上げアップを狙う。

 地元客売上げと観光客売上げの比率は8対2。2割の観光客売上げを底上げして、全体を増やしていく方針である。

「今後の課題は、従業員満足度を高めること。給料などの待遇、休暇の取得など、働き方を問われている今、いろいろな側面から捉えていかないといけない」(清水社長)。

 

  • 1965年ころの吉田本店。この年に、六代目清水保男氏は社長に、五代目一雄氏は会長になった。
    企業名/(株)二葉堂
    所在地/長野県須坂市大字米持591
    代表者/清水基弘
    創 業/1804(文化元)年
    年 商/7億5000万円
    従業員数/48人

 

 

 

※本記事は『商業界』2018年8月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。『商業界』はオンラインストアや紀伊国屋書店など大手書店で発売しております。