日本では今年4月21日から東京の一部地域でサービスを開始。7月には東京18区と狛江市、調布市、千葉県市川市、浦安市、神奈川県川崎市6区、横浜市11区にまで配送対象エリアが拡大(一部エリアを除く)。

 今、店舗の在り方が根本的に問われています。言うまでもなく、インターネットを経由した購買が増えているからです。巨人・アマゾンを筆頭に、ネット小売業は多くの国で店舗を持った小売業=リアル店舗を脅かす存在になっています。しかも、その領域は徐々に拡大、調達や販売技術の難易度が高い生鮮食品の分野も例外ではなく、ついに日本でもアマゾンが生鮮食品に本格参入しました。「競合は商圏内の店だけにあらず」、まずは、小売業関係者として、ぜひとも押さえておきたいアマゾンの動きから紹介します。

川崎フルフィルメントセンターは全体では4万㎡のスペースを擁するが、そのうち7000㎡がAmazonフレッシュ専用の施設。サービス開始に当たって新設した。

 ついに日本でも、首都圏の一部地域限定ではあるものの、「Amazonフレッシュ」のサービスが始まった。アマゾンは、日本では2008年10月に「食品&飲料」ストアを立ち上げ、食品を販売してきたが、取扱商品については加工食品、飲料、酒が中心だった。

 今回あらためて生鮮食品の取り扱いが本格化した形となる。生鮮を含む食品や日用品などを注文から最短4時間で配送するサービスは、スーパーマーケット(SM)が手掛けるネットスーパーや宅配とバッティングするものだ。

 また、一昨年の秋に開始した注文から1時間以内に配送する「プライムナウ」でも、提携する百貨店の生鮮や惣菜などの取り扱いを始め、食品の扱い範囲を広げている。

 こうしたアマゾンの動きが、既存のネットスーパー、引いてはリアル店舗に与える影響はどうか。現状でのサービスの中身を具体的に検討しておく必要がある。

 さらに、リアル店舗を持たないアマゾンの商品の配送拠点は、当然に物流センターとなる。一方、既存のネットスーパーの主流は、リアル店舗を拠点としている。

 今秋以降の展開を予定しているセブン&アイ・ホールディングスとアスクルによる「IYフレッシュ(仮称)」も、ネット通販「LOHACO(ロハコ)」のロジスティクスを活用することから、物流センター拠点型となろう。

 ネットスーパー黎明期の2000年代には、商品の配送拠点として、店舗拠点型と物流センター拠点型とに大きく分かれていた。いったんは店舗拠点型にかじを切ったが、再び、ネットスーパーの根幹に関わるスキームから見直す機会になるかもしれない。

センター内は6温度帯で管理、肉と魚は今後、冷蔵も強化

 Amazonフレッシュは、米国では07年にスタートしており、いつ日本に上陸するかが注目されていた。

 しかし、西海岸の都市シアトルからサービス地域がなかなか広がらない時期が続くと、やはり、温度管理が必要な上に、日持ちのしない食品の取り扱いは難しいのだと憶測された。しかしながら、米国の他都市へと徐々に広がり始め、昨夏にイギリス、今春には日本、さらにドイツへと一気にワールドワイドでサービスを加速させた。

 時間はかかったものの、需要予測システムの向上とともに、食品の取り扱いノウハウを蓄積したということであろう。それを象徴するのが川崎フルフィルメントセンター(FC)内に新設されたAmazonフレッシュ用の施設における商品管理の仕方である。

 
Amazonフレッシュの場合、センター内の商品を6温度帯に分けて管理し、ピッキング。生鮮食品については、毎日のように検品も実施しているという。

 Amazonフレッシュでは、センター内の商品を6温度帯に分けて管理している。1 常温(25℃前後の室温でドライ食品など用)、2 16℃(バナナなどトロピカル系用)、3 7℃(トマト、パプリカなどデリケートな青果専用)、4 2~5℃(葉物野菜や和洋日配用)、5 0℃(チルドの肉と魚専用)、6 マイナス25℃(冷凍食品やアイスクリーム、冷凍肉・魚など用)である。

 ここから分かるように、例えば青果は、凍菜を除いても、特性ごとに4温度帯に分けられる。SMの青果売場でも、ここまできめ細かく温度管理しているところを見掛けない。さらに、入荷から出荷まで毎日、商品の6面の状態を目視でチェックしている。

 現状、見切りなどはしておらず、チェックで引っ掛かった商品は廃棄する。お客に届いた後のことを考慮し、商品ごとに販売期限を定めており、それを過ぎた商品もチェックで弾かれる。そのため、傷みなどで仮に、事前に受けた注文に対する在庫が足りなくなった場合には、上のグレードの代替品を提供するようにしている。

 今のところ、Amazonフレッシュの取扱アイテム数17万点超のうち、食品は1万7000点ほどだが、今後も食品の品揃えは強化されるだろう。

 特に、肉は豚肉を除き、現在は冷凍の商品が主体だが、需要予測の精度向上などに伴って、冷蔵主体の品揃えも強化していきたいとする。魚は冷凍だけでなく、サーモンやマグロなどのサクの他、刺身盛り合わせでも冷蔵の商品があるが、こちらも同様に冷蔵についても、さらに充実させていく意向だ。

「肉が冷凍の状態で届くと、すぐに料理に使えずに不便だという声をいただいた。そのため届いてすぐに使えるチルドの肉を増やしている」と、荒川みず恵・アマゾンジャパンAmazonフレッシュ事業本部リテール事業部長はいう。鮮魚にはフィーレばかりでなく、丸魚もあるが、内臓を取り除くなどの下処理を施し、「時短」への配慮も怠らない。

 価格については、「アマゾンとして適正だと思われる価格を付けている。アマゾンには『競合』という概念は基本的にはない。個別の競合店を見て決めるのではなく、独自の価格設定のシステムに基づいて価格を決めている」(荒川部長)

 さらに、原価に利益を乗せるという考えでもないという。「利益は基本的に考えていない。まずはお客さまから見て適正な価格であること。利益はその次」(荒川部長)。もちろん、お客の声を受け、品揃えや価格、容量を変えるといったことを常に行っている。