厚生労働省のデータによれば、平成26年時点で専業主婦世帯は687万世帯、1114万世帯が共働き世帯と発表されています。数値は昭和55年時点とほぼ逆転、女性の社会進出や雇用形態の変化、少子高齢化など複合的な要因で、共働き世帯の割合は今後も増加していくと推察されます。

 この連載では実際に共働きしている家族を料理・買物・生活という切り口で取り上げ、どんな日常を送っているのかショートエピソード形式で毎週お届けします。

第6話 料理好きの妻・朋子の目線

 夫の茂と初めて出会ったのは、30歳のときだ。

 社会人として毎日の仕事についていくのが精一杯だった20代を経て、ワークライフバランスのコツをつかみ出し、学生時代にハマっていたバスケサークルに参加したのがきっかけだった。

 初めは仲のいい友人の一人だったが、毎週顔を合わせているうちに会話が弾み、交際を経て33歳で結婚。彼は私より5歳年上で、自分のライフスタイルが既に完成されていた。

 私は、専業主婦の母に家庭の味を教え込まれて育った。煮干しのだしの取り方、野菜の面取り、栄養バランス。母の口癖は「女の子なんだから、料理くらいできなくちゃね」。2018年の家庭ではこういう発言も少ないだろうけど、親世代では平均的な普通の家族の会話だった。

 学生時代は好きな人の苗字を自分の下の名前の「朋子」と重ねてはクラスメイトとキャアキャアはしゃいでいたが、受験をして、大学に入って、どんな仕事をするかを考えるうちに、いつしか自分が専業主婦になるという選択肢は考えられなくなっていた。

 そして料理を趣味にしたまま、私は就職した。

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 仕事は楽しい。やればやるほど成果が出るし、小さな会社だから、大体のことは自分が「やりたいです」と言えば任せてもらえる。

 その分、数字の厳しさはあるけれど、責任あるポジションを任せられていると思うと身が引き締まるし、割と今のチームの雰囲気は良いと思う。

 仕事が忙しくないときは、お弁当を作る。お弁当コーナーに立ち寄ると、かわいいキャラクターのピックや車の形をした小さなお弁当箱がズラッと並んでいる。それらが目に入らないといえば嘘になる。

 自分は、この売場でどう見られているのだろう。「料理が趣味のOL」として? それとも「子供のお弁当を作るお母さん」として?

 茂とは、「結婚しても、それぞれの時間を大切に過ごしたいね!」と言って、生活リズムは変えなかった。苗字以外は変わらない生活はとても楽だった。当初は、子供ができたらそれもいいけど、まあ無理しなくてもいいよねという気持ちだった。

 妊娠適齢期を知らなかったわけではない。でも、どうしても子供が欲しかったわけでもない。毎日を楽しく生きて、お互いに仕事と趣味に打ち込んでいくうちに、2人だけの生活は当たり前のものになっていた。

 そして35歳を超えた今、高齢出産のリスク、大変だけれど周りにも認められている仕事、大好きなバスケをする時間、個が自立している夫婦のいい関係、全てを引き換えにしてまで出産する気はない。

 茂も私と同じような気持ちだった。私たちは、今の生活を大切にしよう、と決めた。

 個人的にいえば、本当は、家庭をいつもきれいに整えている母のような暮らしがしたい。ただそれは、専業主婦だったからできたことなのだろう。

 ぺたんこのパンプスとパンツスタイルでベビーカーを引く友人を見ると、「そういう人生の選択肢もあったんだなー」と思う。自分らしい生活をその都度、選んできた一方で、手に入ったかもしれない選択肢をぼんやり思う。もしかしたら料理を教えてくれた母も、口には出さなくても、おばあちゃんになる夢を持っていたりするのだろうか。

 親戚同士で集まるたびに「そういえば、朋ちゃんとこはまだ子供いないんだっけ? まあ最近は、40歳でも産んでる人がいるからな!」とか、瓶ビールなんかを飲みながら軽いノリで言われると、すごくモヤモヤする。

 どうして、せっかく今を楽しく生きているのに、そうすると決めたのに、いちいち自分の年齢を思い出させるような発言をするのだ。私たちの人生は、私たちが決めたことなのだ。結婚したら子供がいてようやく一人前、みたいな考えは止めてほしい。放っておいてほしい。

 産まない決断は、楽じゃない。

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>第7話 保育園送り担当の夫・隼人の目線

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