『ウォール・ストリート・ジャーナル』の記事を元ネタに欧米各メディアが報じるところによれば、INDITEX会長兼CEOのパブロ・イスラ氏は『今年末をめどにZARAが全世界二千余店(18年4月末で2242店)で店出荷に踏み切る』と発言したそうだ。ECで在庫切れでも店在庫を引き当て、最寄りの店で店舗から直接、顧客に出荷して受け取りを早め、ECと店舗の在庫を一元化して効率も高められるとしている。

 在庫のオムニチャネル一元運用は顧客利便からも在庫効率からも必須の課題だが、ZARAにとっては格別に意味が大きい。それはSMIを軸に店本位の運営に徹してきたZARAがEC主導に転換することを意味するからだ。

SMIStore Managed inventory):店舗側の選択や数入れによる品揃えと在庫コントロールの体制で、本部が各店舗の品揃えと在庫コントロールを行うCMICentral Managed inventory)と対比される。

店舗を追い詰めてもECを拡大する戦略的決断

 オムニチャネル化を進める各段階で、店舗とECのどっちを主体に運用するか決断を迫られる。ECとSNSを連携して商品やイベントを紹介し店舗に顧客を誘導するウェブルーミング。品揃えを拡張し在庫を検索して引き当てるべく店舗からECに顧客を誘導するショールーミング。この双方向の運用を図る中で分かれ目となるのがEC受注品の店在庫引き当てと店出荷だ。

 

 ECの受注に店在庫を引き当て、ましてや店から出荷するとなると、店舗には以下のような弊害が生じる。

 1)売れ筋がEC受注に抜かれて欠品し、売上げが減少する。

2)売上予測に誤差が生じ、在庫コントロールが粗くなる。

3)店渡しや店出荷作業で店舗運営が妨げられ、ネットスーパーでは顧客のピッキングも妨害してしまう。 

 店在庫をEC受注に引き当てれば売れ筋を抜かれて売上げが減るのは必然で、EC比率の高いチェーンでは閉店を加速する要因になっているし、過半を店出荷に依存する米国の小売りチェーンでは、繁忙時に店出荷や店渡しの作業負荷が重なって店舗運営がパンクする事態が報告されている。

 これら弊害を回避するにはEC受注を予測して店舗在庫を積み増したり、店出荷や店渡しの専門要員を配置する必要があるが、それをやっては店舗の在庫コントロールが粗くなり、出荷コストも肥大する(DC出荷より格段に割高)。そんな弊害に目を瞑っても踏み切るというのは、EC主導の成長戦略に舵を切るという“戦略的決断”に他ならない。

 アマゾンやASOSなどEC専業者に利便で対抗するには、店舗に負荷が掛かっても受け取りや出荷の拠点として活用するのは必然で、EC比率が二桁に乗る段階で好むと好まざるにかかわらず決断せざるを得ない。米国の百貨店やアパレルチェーンはもちろん、わが国の大手アパレルも店舗を大量閉鎖する覚悟でEC主導の成長戦略を選択したことは疑う余地もないが(7月6日付け『怖すぎるEC侵略の現実』を参照)。